アトピーはなぜ起こるのか?アトピー性皮膚炎の原因・症状・検査
- 強いかゆみをともなう発疹ができていますか?
- 乳児では2か月、それより上の年齢では6か月以上も発疹が続いていますか?
- 以前にアレルギー反応を起こしたことがありますか?
- 家族にアトピー性皮膚炎にかかった人がいますか?
- 棒で皮膚をこすると、あとが白くなりますか?
大半は成長とともに自然に治りますが、最近では、大人でもアトピー性皮膚炎になる人が増えています。
アトピー性皮膚炎とは?
アトピーという言葉は、「不思議な、奇妙な」を意味するギリシャ語のアトピアがもとになっています。
この言葉どおり、残念ながら、いまだに病気の全体像は十分に解明されていません。ただし、いろいろな治療法や薬は開発されています。
症状は、乳児の場合では、顔面や頭部に赤い発疹(紅斑)や盛り上がった発疹(丘疹)がみられます。
幼児になると、紅斑や丘疹が首やワキの下、肘や膝の裏側にできることが多いようです。乳幼児とも耳たぶが切れることがあります。
幼・小児期になると、発疹のほか皮膚のきめが荒くなってゴワゴワした状態(苔癬化)になったり、肌が乾燥した状態になることもあります。
かゆみをともなうため、ひっかき傷があるのも、アトピー性皮膚炎の特徴です。
アトピー性皮膚炎が一番多くみられるのは子どもです。とくに1~6歳の乳幼児の10~30%は、アトピー性皮膚炎に一度はかかるといわれています。
また、最近は成人のアトピー性皮膚炎患者が増える傾向にあります。
アトピー性皮膚炎とじんましんの違い
じんましんとアトピー性皮膚炎が異なるのは、まずその皮膚症状です。
じんましんでは、丘のように盛り上がった紅色や白色の膨湿がみられるのに対して、アトピー性皮膚炎ではジクジクとした湿疹ができ、やがてかさぶたのような皮をつけたり、ポロポロはがれたりします。
また、急性じんましんは、即時型のアレルギー反応によって起こり、血液の成分が周囲の組織にしみだします。
アトピー性皮膚炎とは違い、アレルゲンが侵入してから数分から数十分後に症状が現れます。慢性じんましんの原因については、まだよくわからないことが多いようです。
また心因性のじんましんや薬物などで起こるじんましんもあります。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎にかかる人はアトピー体質をもっています。
アトピー体質をもつ人の皮膚に家の中のほこり、ダニ、カビ、花粉、動物の毛、人の垢などがつくと、からだが過敏に反応(アレルギー反応)し、湿疹ができます。
食べ物がアレルゲン(アレルギーを引き起こすもと)となっていることも少なくありません。とくに腸管がしっかりできていない子どもの場合は、食べ物に対してアレルギー反応を起こすことがあります。
アレルゲンとなる食べ物は、人によって異なります。卵、牛乳、大豆が3大アレルゲンで、ほかに米、小麦、豚肉などがアレルゲンとなることもあります。
こうした体質は、遺伝的なもので、本人や家族にアトピー性皮膚炎のほかに、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましんといった病気がみられることが少なくありません。
アトピー性皮膚炎の原因となるのは、主にコナヒョウヒダニ(画像)とヤケヒョウヒダニです。
これらのダニは、人間やペットの出すふけ、垢、毛、食べかすなどをエサにして、ハウスダストの中や、カーペット、畳の中にもぐり込んで生息しています。
ダニは乾燥に弱く、湿度60%以下が続くと死にます。ただし、ダニの卵、排泄物、死骸もアレルゲンになります。
アトピー性皮膚炎はなぜ起こるのか?
体内にダニの死骸などのアレルゲンが入ると、リンパ球の一種のヘルパーT細胞がB細胞を刺激し、B細胞はIgE抗体を出します。
IgE抗体は肥満細胞の表面のレセプターと結合して、次のアレルゲンがくると、ヒスタミンなどの化学物質を肥満細胞に放出させます。
これらの物質が、気道や鼻の粘膜や皮膚などでアレルギー反応を引き起こすとされています。
ヘルパーT細胞には、Th1とよばれるグループと、Th2細胞群の2種類があり、Th2細胞がIgE抗体を増加させるインターロイキン4(IL4)、IL5などの活性物質を出し、Th1細胞がIgE抗体の産出を抑えるγインターフェロンなどを放出すると考えられてきました。
しかし抗ヒスタミン薬は、アトピー性皮膚炎の症状のひとつであるかゆみにはよく効きますが、湿疹には効果がないことからもわかるように、これだけではアトピー性皮膚炎がなぜ起こるのか説明がつきません。
また、アトピー性皮膚炎が起きている組織では、リンパ球の集積と好酸球(リンパ球とは別の白血球の一種)の増加がみられます。
現在では、アトピー性皮膚炎は、好酸球の活性化によって引き起こされるのではないかと考える研究者も増えていますが、解明にはまだ時間がかかりそうです。
アトピー性皮膚炎の主な症状
全身の特赦
- 皮脂が少なく、乾燥している
- 皮膚のきめが荒い
- 毛穴に丘疹ができ、とり肌のように盛り上がる
- 汗が少ない
- イライラするとかゆくなる
- 汗をかくとかゆくなる
- 先端が丸い棒でこすると、ふつうは皮膚が赤くなるが、アトピーの患者は白くなる
年代別アトピー性皮膚炎の症状の特徴
年代 | 特徴 |
---|---|
乳児期 | 顔、特にほおを中心に赤斑が現れ、耳や首へと広がる。丘疹をかきこわすと、ジクジクした湿潤性の湿疹となる。しばしば体幹や四肢にも広がる。 |
幼児期 | 顔に赤斑が出現したり消えたりするが、次第に顔の症状は軽くなり、体幹の皮膚が乾燥しザラザラしてくる。耳切れがみられることもある。 |
学童期 | 手足が鳥肌のようにザラザラする。肘の内側や膝の裏側に湿疹ができる。乾燥した皮膚に赤斑が現れ、10円玉ぐらいの塊ができることもある。 |
思春期以降 | 皮膚の乾燥が進み、ごわごわに厚くなる。顔やからだが赤くなったり、首のまわりなどに色素が沈着して黒ずむことがある。 |
アトピー性皮膚炎は慢性化する過程で、年代によって特徴的な症状がみられます。乳児期は顔を中心に現れ、幼児期以降は首、手足、体幹など顔以外に広がります。
また、乳幼児では湿潤性の湿疹ですが、成人になると乾いて硬くなった皮膚症状に変化します。
アトピー性皮膚炎の検査と診断
湿疹の状態、それが慢性的なものかどうか、遺伝的なアレルギーをもつ家系かどうか、ぜんそくなどのアレルギー性疾患などにかかったことがあるかどうか、などを総合的に考えて、アトピー性皮膚炎を疑います。
次に血液検査を行い、好酸球、IgE(免疫グロブリンE)抗体などを調べます。好酸球は白血球の一種ですが、患者の多くは、好酸球が増えています。
IgE抗体は、アレルゲンの侵入に対抗してつくられ、アレルゲンと反応して、免疫機構がアレルゲンを排除しやすくする働きをしています。
アトピー性皮膚炎の患者のほとんどは、血液中に含まれるIgE抗体の総量が多くなっています。
ダニ、卵、牛乳といった特定のアレルゲンに対して、IgE抗体がどれだけあるかを調べて、何がアレルゲンとなっているかを判定する方法もあります。
ただし、血液検査は必ずしも症状と一致しないケースがあるので、これだけで診断はできません。
皮膚に少量のアレルゲンを入れてアレルギー反応が起こるかどうか調べるテストもあります。
このときは、まず、腕や背中の皮膚に針で浅い傷をつけ、そこにアレルゲンのエキスをたらす、プリックテストやスクラッチテストを行います。
疑わしいアレルゲンで、これらのテストではっきりしないものについては、皮膚にアレルゲンエキスを注射する皮内テストを行います。皮内テストのほうが、結果がよりはっきり現れます。
食物アレルギーの場合は、これらの皮膚テストの結果が必ずしもあてはまりません。食物アレルギーを調べるには、食物負荷試験を行います。
これは、アレルゲンと疑われる食べ物をいったんすべて食べないようにして、2週間から1か月後、症状がおさまってから、ほんの少量を口にして反応をみるものです。
アレルゲンがはっきりわかるので、子どもの食事療法をすすめる場合には、よくこの試験が行われます。
アトピー性皮膚炎の主な検査
種類 |
検査の方法 |
評価方法 |
---|---|---|
血液検査 |
血中好酸球の数の測定 |
白血球全体の5~6%を超過 |
皮膚反応検査 |
スクラッチ法 |
20分後に直径5~15mm以上の紅斑やはれが発現 |
食物誘発試験 |
除去試験 |
2週間から1か月、アレルゲンと推定される食物を除去して症状が軽減するかどうか |
一般に5歳以下の子どもの場合は、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因となっていることが多く、それ以上の年齢になってくると、ダニアレルギーが関与しているケースが多いようです。
つまり、年齢によってアレルゲンは変わってくるということです。