脂質異常症(高脂血症)の治療

脂質異常症(高脂血症)の治療

 

 

脂質異常症(高脂血症)の治療には、生活改善、食事療法、薬物療法、特殊療法があります。

 

 

【生活改善】

 

家族性高コレステロール血症(家族性高脂血症)を除き、症状が軽い場合は生活習慣の改善により、血清脂質値を下げることができます。

 

生活面で特に改善が必要なのは、運動不足、飲酒と喫煙の習慣です。

 

 

運動は、長時間たまに行うよりは短時間でも回数を多くし、しかもウォーキングやエアロビクスダンスといった有酸素運動を継続するほうが、LDLが減少し、HDLが増加して体重が減少することが認められています。

 

定期的に運動するには、スポーツジムやスイミング教室などに通う以外に、日常生活でも、できるだけからだを動かすことです。

 

からだが軽くなったり、動くのが億劫でなくなったと感じるころには体重も減り、血清脂質の値も下がってきます。

 

 

アルコールは過飲すると中性脂肪濃度やVLDLを増やします。また、急激に大量のアルコールを口にするとHDLが低下するという動物実験の結果も報告されています。

 

しかし、適度なアルコールはHDLを増加させるという調査もありますから、血清脂質や代謝に影響を与えない程度の飲酒であれば問題ないといえるでしょう。

 

一般に、1日25mg程度で、ビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーならシングルで2杯くらいが適量とされます。

 

 

喫煙はHDLコレステロールを低下させ、LDLコレステロールを増加させて動脈硬化を促すことが、多くの実験で確かめられています。タバコの本数を減らしたり、禁煙しましょう。

 

 

【食事療法】

 

血清脂質に影響を与える食事の因子としては、総エネルギー量、脂肪の摂取量、コレステロール量、脂肪酸の種類、たんぱく質の量と種類、炭水化物の量と種類、ビタミンとミネラルの摂取量、食物繊維の種類と量などがあげられます。

 

総エネルギーの過剰の原因が脂肪のとりすぎにあると、コレステロール値が増え、炭水化物のとりすぎが原因であれば中性脂肪値が上昇するとされます。

 

 

性別や年齢、労働量により多少違いますが、肥満している人は、1日1,600kcalを目安に節食します。また、総エネルギーに占める脂肪摂取量の割合も考慮しなければなりません。1日の脂肪の摂取量は総エネルギー量の25%以下に抑えましょう。

 

特にWHO分類でⅠ型やⅤ型の脂質異常症(高脂血症)の人は、脂肪量を1日20g以下(エネルギー換算で180kcal以下)にします。動物性脂肪を少なくして、大豆や植物油などの植物性脂肪で半分以上を補います。

 

 

コレステロールの摂取量が多いと、コレステロール値が高くなります。1日の量は300mg以下に、家族性高コレステロール血症(家族性高脂血症)では100mg以下に抑えます。

 

コレステロールが多い鶏卵、レバー、魚卵など動物性食品の摂取は控えめにします。イモ類、穀類、根菜類、海藻などに多い食物繊維はコレステロールの排泄を促すので、積極的にとりましょう。

 

また食物繊維では、特にバナナ、アンズなどに多いペクチン、コンニャクに含まれるマンナンなどの水溶性のものが血清コレステロールを低下させるといわれます。

 

 

 

脂肪酸には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸があります。

 

このうち、獣肉やバターなどに多い飽和脂肪酸は血清コレステロールを増加させ、植物油やマグロ、サバ、イワシなどの青魚に多い多価不飽和脂肪酸は血清コレステロールを低下させることが認められています。

 

なかでも青魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)には、血清脂質を低下させ、HDLを増やし、血栓の形成を抑える働きがあるとされます。

 

 

 

また、一価不飽和脂肪酸はオリーブ油、ナタネ油、落花生などに含まれていますが、HDLコレステロールを低下させずにLDLコレステロールを減らし、虚血性心疾患の予防に有効とみられます。

 

飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の割合を1:1.5:1にします。

 

 

たんぱく質では、動物性たんぱく質の摂取は血清コレステロールを増加させ、大豆などの植物性たんぱく質は血清コレステロールを低下させます。

 

動物性たんぱく質と植物性たんぱく質は2対1の割合で摂取するとよいでしょう。

 

 

炭水化物では、蔗糖(しょとう)などの糖質が血清中性脂肪を増加させるとみられ、ジュースやお菓子の摂取は注意が必要です。

 

そのほかビタミンCが血清コレステロールの低下に関係するとされます。ミネラルでは、マグネシウムや銅などが不足すると血清コレステロールが上昇するとみられます。

 

 

 

【薬物療法】

 

運動や食事によっても脂質異常症(高脂血症)が改善されない人や、高血圧糖尿病など血清脂質値が上昇する病気を合併している人、あるいは重度の脂質異常症(高脂血症)の人には、薬物療法を行います。

 

LDLコレステロールを1%低下させ、7年間維持すれば、虚血性心疾患の発症を2%予防できるという報告もあります。

 

 

脂質異常症(高脂血症)の治療薬は、脂質代謝改善剤です。別名、動脈硬化治療剤ともいいます。脂質異常症(高脂血症)のうちでも、高コレステロール血症か高トリグリセライド血症か、さらに症状の重さによっても薬の種類は異なります。

 

薬によっては嘔吐、皮疹、かゆみなどの副作用が出ることがあります。また合併症によっては、あるいは妊娠時には服用してはいけない薬があるので、そのようなときは必ず医師に告げましょう。

 

服用中に副作用が出たら、薬を中止し、主治医の診察を受けます。

 

肉よりも魚のほうがが血清脂質を上昇させないのはなぜですか?

魚に多く含まれている脂肪酸を多価不飽和脂肪酸といいますが、そのなかでもEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、肝臓内での中性脂肪やVLDLの合成を減らしたり、コレステロールを胆汁酸に分解する働きをするので、脂質異常症(高脂血症)を防ぎます。

 

血中の脂質が低下すれば、動脈硬化を予防し、生活習慣病である虚血性心疾患や脳梗塞といった脳血管障害などを防ぐ効果があります。

 

特にアジ、サバ、イワシ、マグロなどの青魚にEPAやDHAは多く含まれています。また、魚のなかにはアコウダイ、アナゴ、アユなど脂肪が多いものがあり、それらを食べれば血清脂質は上昇しますが、それでも牛の脂身などに比べると脂肪は少なく10分の1程度とされます。

 

子どものうちは獣肉からのたんぱく質も必要ですが、脂質異常症(高脂血症)の傾向があったり、中年以降、脂質異常症(高脂血症)になりやすい年代では、肉より魚を常食にするほうがよいでしょう。

 

 

脂質異常症(高脂血症)の人はエビやタコ、イカを食べてはいけませんか?

かつてエビ、タコ、イカは、血清コレステロールを増加させる元凶のようにいわれていました。実際、食品成分表をみるとコレステロールを多く含む食品です。しかし、これらの食品には、タウリンというアミノ酸がたっぷり含まれており、これが血液中の中性脂肪の増加を防いだり、血液の流れをよくすることから、食事指導においては摂取してもよいとされています。

 

しかし、コレステロールを多く含んでいることには変わりはないので、過剰に摂取するのは避けるべきです。また、キノコ、海藻、ホウレンソウ、緑黄野菜など、コレステロールを排泄する働きのある食物繊維を含んだ食品と一緒に食べるようにしましょう。

 

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