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手の疾患

目次

 


 

こんな症状に注意
  • 物をうまくつかんだり、握ったりできなくなりましたか?
  • 手が痛みますか?
  • 指や手首を曲げたり伸ばしたりすると、痛みがありますか?
  • 手がしびれますか?
  • 手指の関節が膨らんだり、曲がったりしていますか?
  • 手首や指に、ぐりぐりした袋状の塊がありますか?

 

手はきわめて繊細でコンパクトな構造と鋭敏な感覚をもち、複雑な動きをします。一度その機能が損なわれると、修復は容易ではありません。

 

手の疾患

 

手の構造と機能

 

多彩な動きを支える関節、筋肉、神経

 

手は、骨と関節、靭帯を軸として筋肉と腱がバランスよく組み合わされ、複雑で微妙な動きが可能になっています。

 

手には運動と知覚を支配する神経が細かく張りめぐらされており、手掌(手のひら)側、特に指腹部には知覚神経や知覚受容器が密に分布し、物に触れると鋭敏な反応を示します。

 

 

自律神経系も発達しており、手に汗をかいたり、冷たくなったり温かくなったりします。

 

血管も枝分かれを繰り返し、縦横に走り、特に手背(手の甲)側では静脈が発達しています。

 

 

また、手指は直接物に触れるので外傷を生じやすく、手掌側ではこれに対抗するため、表皮層が厚くなっています。

 

一方、手背側の皮膚は、手指の屈伸がしやすいように、弾力性に富んでいます。

 

 

手の働きで特徴的なのは物を持つ機能で、つまむ、握る、はさむといった動きです。

 

さらに、物に触れて、その形状や温度、性質などを感知する能力も備え、鋭敏な知覚によって触れた物を瞬時に判断し、つまんだり、握ったりする動作の力の大きさをコントロールします。

 

手の骨の構造

手の骨の構造

手は数多くの細かい骨が複雑に組み合わさって構成されています。

 

手首は前腕部の長い2本の骨である橈骨(とうこつ)、尺骨とその先の手根部の八つの骨が接している部分です。

 

 

手根部に続く中手部は、手のひら、手の甲にあたり、細長い骨が5本並んでいて、指へとつながります。

 

骨と骨の間は関節で、骨同士は靭帯と腱でしっかり結び合わされ、手首や指の屈曲、伸展、内転、外転といった柔軟な動きを支えています。

 

腱周囲には滑液を内包した腱鞘があり、関節の動きをスムースにしています。

 

手の運動と知覚を支配する神経

手の運動と知覚を支配する神経

 

手の神経は、橈骨神経、尺骨神経、正中神経です。

 

頸髄、胸髄から発した神経根が腕神経叢(わんしんけいそう)を構成し、その末梢が分枝して手の神経を形成しています。

 

手の皮膚の知覚は各神経によって支配する領域が分かれています。

 

 

 

 

 

手の外傷

 

外部との接触で障害を受けやすい

 

手は常に物と接して働いているため、最も怪我の多い部位です。

 

手のどこかに障害が起こると、日常生活に大きな支障をきたします。

 

切創や裂創

日常よくみられる外傷で表面の単純な傷から、内部の組織や関節の損傷を伴うものまで程度はさまざまです。

 

治療のポイントは、傷口だけにとらわれず、ほかの部位に損傷はないか、ショックは起こしていないかなど、全身状態を観察することです。

 

 

そのうえで、傷口の汚染を洗浄して止血するほか、皮膚、筋肉や腱、骨や関節の修復といった治療をします。

 

受傷後6時間以内に適切な処置が施されることが原則とされ、汚染されたまま6時間を過ぎると、傷口の感染が起こる危険があります。

 

捻挫、骨折、脱臼

打撲、捻挫をはじめスポーツや交通事故、仕事中の事故による外傷まで、その原因はさまざまです。

 

捻挫は指の関節に多くみられ、急激に力が加わったときに起こります。

 

皮膚に傷がなくても、皮下組織、筋肉、関節、靭帯、骨、血管、神経などに損傷を受けている可能性があります。

 

 

手の骨折は、比較的よくみられる外傷で、痛み、内出血、腫れ、変形などの症状が現れます。

 

手を強くついたときに、手首の親指側にある舟状骨を折るケースがよくみられるほか、手のひらを形づくる中手骨は喧嘩や転落などで、指の骨はオートバイやスキーなどの事故による骨折を起こしやすい部位です。

 

 

脱臼は、関節で合わさっている骨の面がずれた状態で、痛みや腫れ、変形、運動障害などの症状がみられます。

 

脱臼と骨折が同時に起こることもあります。

 

 

脱臼でよくみられるのは、手首の骨の一つである月状骨の脱臼で、やはり手を強くついたときに起こります。

 

指骨の骨折や指関節の脱臼もよく起こり、屈筋腱と伸筋腱のバランスや靭帯などによって、特有な変形を示す場合があります。

 

 

診断にはX線検査を行い、骨や周囲の状態、骨折部や脱臼部の軸のずれ方をよく確認します。

 

そして骨や関節を正しい位置に修復し、安定させることを目的に、整復、固定、リハビリテーションという3段階の治療を行います。

 

骨折や脱臼の程度や状態、受傷後の時間経過によっては手術が必要なこともあります。

 

筋肉と腱の損傷

最もよくみられるのは、挫創(ざそう)などに伴って起こる腱断裂ですが、皮膚に傷がなくても、関節リウマチや急激な筋収縮などによって皮下断裂を起こす場合があります。

 

また高齢者では、腱に変性が生じて、少しの力が加わっても損傷を受けやすくなります。

 

腱が損傷すると、その部分が変形し、屈伸ができなくなります。特に、手首の親指側にある橈側手根伸筋腱の損傷は、手関節の安定を失わせ、屈筋群の機能にも影響して手指の正常な働きを妨げます。

 

 

つき指などによって損傷を受けた指の腱を長期間放置したり、関節リウマチが進行すると、やがて筋肉が収縮したままになり、指の関節が変形します。

 

関節リウマチでは、ボタンホール変形、スワンネック変形がよくみられます。

 

 

筋肉の断裂は肉離れとよばれ、筋線維が切れたり、筋膜が破れたりするものです。

 

激痛を伴い、その部分の筋肉の収縮ができなくなります。(肉離れを起こしたときの応急処置

 

治療は、筋肉の断裂の場合は固定し、腱の断裂は縫合を行いますが、手の正常な腱を利用して腱移植が施される場合もあります。

 

 

 

 

 

手の神経の損傷

 

運動機能、知覚機能が障害を受ける

 

手指に直接関係する神経は橈骨神経、正中神経、尺骨神経の三つです。

 

これらのどれかが単独あるいは合併して損傷を受けると、麻痺が起こり、運動機能や知覚機能が侵されます。

 

 

自然回復が望めないときは神経縫合、神経移植のいずれかの手術を行って回復を待ちます。

 

しかし、障害を長期間放置しておいた場合や、損傷の範囲が広かったり、激しい損傷で筋肉の変性を伴ったり、神経と筋がともに傷ついているケースでは、運動や知覚機能の回復が期待できず、機能再建術が必要となります。

 

 

運動機能の再建には、手の正常な筋肉と腱を麻痺部分に移す方法や、関節付近の骨に腱を固定させて関節の安定を図る手段がとられます。

 

知覚機能の再建には、神経が損傷している部分に手の別の部分の神経を移して補ったり、神経と動脈ごと皮膚を移植する治療法があります。

 

 

麻痺の範囲が広いと、こうした手術を行ってもすべての機能を回復することは不可能になり、つまむ、握るといった動作と、親指、人さし指、中指の知覚という基本的な機能しかとり戻せない場合もあります。

 

神経絞扼症候群

(しんけいこうやく)

手の末梢神経が圧迫されると、手の変形や筋力の低下、知覚障害などが起こります。

 

これを神経絞扼症候群といいます。

 

 

代表的な疾患は手根管症候群で、正中神経が手首の手掌側で圧迫されることにより、手指の麻痺症状が生じます。

 

中年女性に多くみられ、骨折や脱臼、手根管部(手首)のガングリオン、関節リウマチ、甲状腺機能低下症などが主な原因ですが、手を使いすぎたときにもよく発症します。

 

人さし指から薬指にかけてしびれが現れ、痛みを伴うこともあります。夜間に症状は強まる傾向がみられます。

 

 

治療は、軽症のときは手首を固定したり、正中神経の周囲に副腎皮質ホルモン剤を注射します。

 

重症の場合は正中神経を圧迫している靭帯を切り離す手術を行います。なお、原因となる疾患があれば、その治療も継続します。

 

フォルクマン拘縮

肘関節部の骨折や脱臼などによって、前腕の筋肉群とその付近の神経が損傷を受け、手指の神経麻痺や変形をきたす疾患です。

 

前腕や肘に激しい痛みを覚え、手指が白くなってしびれたり麻痺する、手首の脈が触れないなどの症状が現れます。

 

少しでも異常がみられたら、できるだけ早い時期に、前腕部の筋膜層を切開して、筋肉や神経の圧迫を防ぎます。

 

 

早期に適切な治療を受けないと、肘から指までのすべての筋肉が壊死し、手首や指の関節が曲がって動かなくなります。

 

壊死が起きると、神経や筋肉の剥離や切除をして、運動・知覚機能を再建する手術が必要になります。

 

 

 

 

 

手の炎症

 

感染や使いすぎによる刺激などが原因

 

細菌感染や、繰り返し加わる刺激以外に、加齢による組織の変性や免疫異常によっても炎症が起こります。

 

急性化膿性炎症

多くは傷口から細菌に感染して発症しますが、皮膚に傷がなくても細菌が血流にのって打撲した個所などに感染することもあります。

 

特に爪の周囲の爪周囲炎や爪下炎が多くみられます。膿瘍(のうよう)が形成されている場合は切開して膿を排出します。

 

 

急性化膿性指屈筋腱腱鞘炎は、手掌の皮下膿瘍から起こる炎症で、切開して排膿、洗浄します。

 

進行して腱が壊死に陥ると、機能障害が起こります。

 

腱鞘炎

腱鞘炎とは一般には関節の使いすぎによって起こりますが、関節リウマチなどの疾患を原因とするケースもあります。

 

手指の場合は、指の屈伸時に痛みを感じます。

 

 

手首では、親指側によく発生し、親指の痛みを伴います。

 

治療は、関節の固定、副腎皮質ホルモン剤の注射などを行います。それで効果がなければ手術を施します。

 

変形性関節症

関節は働きが激しいため、加齢とともに変性や循環障害をきたしたりすると、慢性的な炎症が起こりやすくなります。

 

関節の骨の硬化や変形によって指先の関節が腫れて屈曲し、痛みを伴うヘバーデン結節は、変形性関節症の代表的な例です。

 

 

また、靭帯の変性で親指つけ根の関節が不安定になる変形性関節症もよくみられます。

 

治療は、消炎鎮痛剤や循環改善薬の投与、温熱療法、副木やテーピングによる関節の固定などを行いますが、痛みが激しく関節が不安定だと、手術が必要になる場合もあります。

 

リウマチ病変

関節リウマチは、まず手指の関節、腱鞘に炎症が現れ、全身の関節に広がっていきます。

 

手では手首の関節、手指の上から2番目と3番目の関節が侵され、腱の皮下断裂、神経の損傷が起こる手根管症候群、腱鞘炎、腱鞘炎の一種で指の屈曲に支障が出るバネ指などが起こります。

 

破壊が進むと、手は特徴的なさまざまな形に変形します。

 

 

治療は、炎症を抑えるための薬物療法のほか、副木といった装具で変形を防いだり、温浴療法、運動療法などが行われます。

 

症状が長引いたり、進行するケースでは、手指の変形によって失われた機能を回復させるため、手術が実施されます。

 

特に、指伸筋腱の皮下断裂によって急に指が伸ばせなくなった場合には、早めに手術が必要です。

 

 

 

手の腫瘍

 

大部分が良性、根本治療は切除

 

皮膚や筋肉、神経、骨などさまざまな部位に腫瘍がみられます。

 

大部分は良性で、痛みや機能障害がなければ経過観察を行うケースも多くみられますが、根本治療は手術による切除です。

 

悪性腫瘍はまれですが、進行が早いので、迅速な手術が必要です。

 

ガングリオン

手の腫瘍として最もよくみられるもので、手の甲や手首に袋状の腫瘤(しゅりゅう)が触れます。

 

軟らかく弾力のある場合も、軟骨のようにコリコリと感じられる場合もあります。原因はよくわかっていませんが、関節や腱鞘の結合組織がゼリー状の液体に変性して、大きな一塊ののう腫になると考えられています。

 

 

ガングリオンが大きくなると、手を動かしたときに痛みを覚えたり、神経麻痺をきたすことがあります。

 

その場合は、内部の液体を注射器で吸引したり、腫瘤を完全に摘出します。小さくて痛みもない場合は、放置しておいても支障はありません。

 

ガングリオンが出来やすい部位

ガングリオンは若い女性によくみられる良性の腫瘍です。中には、無色透明のゼリー状の液体が入っています。

 

手首の関節の手背側、同じく手首の手掌側、指のつけ根の順に起こります。指の各関節にもよく現れます。

 

ガングリオンが出来やすい部位

 

類上皮のう腫

外傷を受けたときに、皮膚の表皮層が皮下に入りこみ、そこから出る内容物が徐々にたまって腫瘤になると考えられています。

 

手や指の手掌側によく発生します。

 

 

 

 

手の外科とは、どのような診療科でしょうか?

手の外科は、肩から先の上腕、肘、前腕、手首、手のひら、手の甲側、指など、手の動きに関係する部位の怪我や疾患を正しく診断し、機能を失わないよう、あるいは失われた機能を回復させ、修復する目的で治療を行う診療科です。

 

手の構造や働きはきわめて複雑で微妙なため、その治療には特殊な知識や技術が必要となり、整形外科、形成外科、神経外科、血管外科の手に関する分野が統合された臨床科として独立したのです。

 

日本では、医療法の制限によって、「手の外科」という診療科名は掲げることができませんが、大学病院などでは整形外科、形成外科で手の外科の診療が受けられます。

 

指を脱臼した後、関節がスムーズに曲がりません。

手の治療は、骨折、脱臼、外傷などの治療がすめば終わりというわけではありません。

 

手術や治療後のリハビリテーションを適切に行わないと、筋肉が収縮したり、関節が強ばって動きが悪くなる拘縮という現象が起こり、手の動きが不自由になります。

 

 

拘縮は、皮膚、筋と腱、関節包と靭帯、骨、軟骨などの組織の癒着や炎症が原因となって起こります。

 

原因となる組織を確認したら、急性の場合は浮腫(むくみ)を予防したうえで、手術や固定などの方法で治療します。

 

拘縮が慢性化した場合には、温熱療法、筋力増強トレーニングや、関節を動かす訓練などを行います。

 

手は、日常生活で最もよく使用する部位です。直接周囲の物と接触するため、損傷や障害を受ける機会が一番多い部分です。

 

家庭での応急手当てで治癒する軽い怪我もたくさんありますが、大きな外傷、しびれ、慢性化した痛みなどが生じた場合は、専門医の診察を受けましょう。

 

また、大きな外力が加わったときには、目に見える外傷がなくても、組織の内部が損傷を受けて変化が起こっている可能性があります。早期に適切な治療を受けることが望まれます。

 

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