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テニス肘・野球肘の症状・原因・治療・予防法

目次

 


 

成長期は骨や軟骨、筋肉が未発達で傷つきやすい時期です。

 

過度な負担をかけない用具を選び、体力に見合った適度な練習を心がけましょう。

 

テニス肘・野球肘とは

 

テニス肘・野球肘の症状・原因・治療・予防法

 

肘の使いすぎに注意

 

幼少期からスポーツに親しむ機会が増えました。幼いころからからだを鍛えるのは大切なことです。ただ、骨や筋肉が発達途中で未完成なうちに負担の大きい運動をすると、障害を起こす危険があります。

 

特に、肘の骨や筋肉の決まった部分に繰り返し無理がかかるスポーツをしている子どもには注意が必要です。

 

テニス肘と野球肘

テニス肘、野球肘は、成長期に起こりやすい代表的なスポーツ障害といえます。

 

テニス肘はテニスなどのラケット種目の選手に多く、野球肘や投球骨折は主にソフトボールや野球のピッチャーやキャッチャーにみられます。どちらも一番酷使する肘や腕の部分に症状が現れるのが特徴です。

 

利き腕の肘やその周辺の痛みを訴えたり、肘が曲げにくいようなときは整形外科で診察を受けましょう。

 

 

 

テニス肘

 

腕の内側または外側が痛む

 

テニス肘の症状と原因

 

テニス肘とは、テニスやスカッシュ、バドミントンなどラケット種目の選手のラケットを持つ側の肘がだんだん痛くなる病気です。

 

肘の外側が痛むタイプと内側が痛むタイプに分けられ、原因が多少異なります。

 

 

外側が痛む場合を上腕骨外上顆炎(バックハンド・テニス肘)とよんでいます。

 

手や指を伸ばす筋が上腕骨外上顆にくっついているために、この筋の使いすぎで痛みが出ると考えられています。

 

 

一方、肘の内側が痛むタイプを上腕骨内上顆炎(フォアハンド・テニス肘)といいます。

 

上腕骨内上顆に付着している手や指を曲げる筋の使いすぎで起こります。

 

 

テニスではボールがラケットに当たった瞬間、肘に大きな負担がかかります。

 

最初は手首を少し伸ばした状態でラケットを握っているのですが、ボールが当たる瞬間には手首を伸ばす筋と曲げる筋を同時に強く収縮させて、ボールの衝撃を受けとめようとするからです。

 

またラケットの重さや大きさが子どもに合っているか、技術レベルに見合った指導をしているか、偏った練習をしていないかなど、日ごろの練習状況も見直してみる必要があります。

 

特に動かさなければあまり痛みを感じない場合も多いのですが、指で押したり、ぞうきん絞りのように前腕をひねる動作をすると、痛みが強くなるのが特徴です。

 

テニス肘のメカニズム

 

テニス肘のメカニズム

 

テニス肘では、肘の外側が痛むケースが約8割を占めています。痛みや炎症が現れやすいのは短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)です。

 

肘の関節のまわりにある3つの橈側筋のうち、手を外側にそらせる働きのある短橈側手根伸筋は、比較的弱く、炎症を起こしやすい筋肉です。

 

テニス肘の診断

 

テニス肘はレントゲンなどではなかなかわかりにくい病気です。そのためスポーツ歴や症状などを問診したり、「テニス肘テスト」をして総合的に診断します。

 

テニス肘テストでは、肘の外側が痛む場合は手首をそらしたり中指を強く伸ばす動作で、痛みが増すかどうか調べます。

 

また内側が痛むときは、逆に手首や中指を手のひら側に曲げて痛みが強くなるかどうか試します。内側、外側、どちらの場合も、痛みが強まるようであればテニス肘の疑いが濃厚です。

 

テニス肘の治療

 

患部を安静にすることが大切なので、ひとまず原因と考えられるスポーツは中止し、なるべく肘を動かさないようにします。

 

とはいえ、鉛筆や著を握る利き手に起こる場合が多く、肘を使う日常的な動作を制限するのは難しいものです。

 

 

子どもは簡単なサポーターや弾性包帯で肘を固定したほうが、回復も早いようです。

 

手首を動かすと痛みが強くなるときは、肘から手の甲にかけてプラスチックの装具やサポーターで固定したり、テーピングで手首の動きを抑制する方法もあります。

 

【湿布や消炎剤も効果的】

血液の循環をよくするために、温めたり逆に冷やしたりするのも効果的です。軽いテニス肘なら、こうした患部の安静や湿布、また消炎鎮痛剤を使用する程度で治ります。

 

痛みが軽くならなかったり、むしろ以前よりひどくなるようなときは、痛む場所に局所麻酔剤とステロイド(副腎皮質)ホルモン剤をいっしょに注射する方法があります。

 

2週間に1回ずつの注射を2~3回線り返せば、7割の子どもは治ります。4回以上注射しても症状が改善しなければ、注射の効果はあまりないと判断して中止します。

 

特に子どもに対しては、ステロイドの副作用の影響を考え、漫然と続けるべきではありません。

 

【重症なら手術も検討】

このような患部の安静や消炎剤の服用、ステロイド剤の注射などさまざまな保存的療法(非手術療法)を8か月以上試しても効果がみられないときは、骨膜にくっついている筋肉をはがす手術を検討します。

 

ただし手術で完治を望むことは難しく、特に成長過程の子どもの手術には慎重な配慮が必要です。

 

テニス肘の予防法

 

子どものテニス肘を予防するには、まずその子に合った用具を選び、ラケットが重すぎないか、グリップが太すぎないか、ガットの張りが強すぎないか、チェックすることが大切です。

 

フォームについても、知識を備えた指導者にみてもらい、レベルに合った練習をして正しい技術を身につけます。急に練習量を増やすようなことはやめましょう。

 

【日ごろから肘のストレッチングを】

練習の前後だけでなく、日ごろから筋肉を柔らかくする肘・手首・指のストレッチングや筋力強化を心がけて、ボールの衝撃に耐えられるような体力をつけておくことも大切です。

 

テニス肘予防のストレッチング法には肘を伸ばしたまま、利き手の手首をもう一方の手でつかんで曲げたりそらしたりするなどの方法があります(■下図参照)。

 

こうした注意を守ったうえで、もし肘に痛みを感じたら、すぐに運動を中止し、整形外科でみてもらったほうがよいでしょう。

 

テニス肘を予防するストレッチング法

 

テニス肘を予防するストレッチング法

 

運動の前後はもちろん、日ごろからこのような曲げ伸ばしをして筋肉を柔らかくしておきましょう。

 

1.肘を伸ばしたまま利き手の手の甲をもう片方の手でつかみ、ゆっくりそらして1分間止め、次に手のひら側に手首を折るようにゆっくりと倒し、1分間止める。

 

2.肘の外側が痛いときは、肘を伸ばして手の甲を床につけて手首を曲げる。内側が痛いときは、手のひらを床につけて手首を伸ばす。

 

 

 

軟式のほうがテニス肘になりにくい

 

テニスには硬式と軟式の2種類があり、ボールもラケットも違います。

 

硬式で使うボールは文字どおり硬めで、当たると強い衝撃があります。

 

これに耐えられるように、硬式ラケットのフレームは太くて、ガットも強めに張ります。一方、軟式ではゴムまりのような軟らかいボールを使い、打球のときの衝撃も小さいものです。

 

そのうえラケットのスイートスポット(有効な打球面)が広く、多少中心がズレていても、少ない力でボールをよくはね返します。そのため硬式よりも軟式のほうが肘に負担がかからず、テニス肘も起こりにくいといえます。

 

テニスというと硬式がポピュラーですが、意外なことに日本の小・中学生には軟式のプレーヤーが多いのです。そのため欧米に比べて、日本の子どものテニス肘患者は少なくてすんでいるのです。

 

 

 

 

野球肘・投球骨折

 

投球動作の繰り返しで起こる

 

野球肘の原因

 

学校の野球部や少年野球チームで、猛練習に励む子どもも多いことでしょう。

 

ピッチャーの場合は、繰り返し投球動作をするうちに、だんだんと投げる側の肘が痛くなってきて、動きが悪くなることがあります。このような状態を「野球肘」とよんでいます。

 

【成長期の軟骨は傷つきやすい】

18歳以下の成長期の骨はまだ成長段階にあります。関節近くの骨の先端にある成長軟骨体(骨端線)は成長期だけにみられるもので、骨の成長をつかさどっています。

 

また、その先で骨と骨がすり合っている部分(骨端と関節軟骨)も全部軟骨でできています。特に成長期の軟骨は、成人のものと比べて軟らかく水分が多いので、とても傷つきやすいものなのです。

 

 

この時期に投球動作を繰り返すと、そのたびに軟骨に圧力が加わり、肘の関節についている筋肉や腱が過度に引っ張られたりねじれたりします。その結果、軟骨の損傷や肘の関節周辺の炎症が発生し、肘に痛みや腫れを起こすのです。

 

ひどい場合は骨の発育が止まります。関節の変形が起こる場合もあります。

 

【筋肉の炎症や骨折にも注意】

このような肘近くの障害に限らず、肘を曲げる役目をしている上腕二頭筋の炎症や上腕骨(二の腕の骨)の骨幹部が折れる投球骨折も、広く「野球肘」に含めています。

 

投球骨折は、投球時に腕を回す腕力とそれによって生じる慣性力に対して、上腕筋のバランスがとれないために起こります。ひねりが加わってらせん状に骨折するので、治療も複雑で治りにくいものです。

 

野球肘が起こるわけ

 

投球するとき、肘の内側には引っ張る力が、外側には圧迫力が加わります。

 

野球肘の痛みは、繰り返されるこの2種類の力の作用が原因になっています。

 

野球肘の症状

 

野球肘に共通する症状は、肘の痛みです。ボールを投げたり、ひねるような動作をすると、強い痛みを感じます。

 

また通常は痛くないのに、肘の内側や外側を押すと痛がったりします。

 

【野球肘のタイプはさまざま】

腕の動きが悪くなって、野球肘に気づくこともあります。

 

なかでも肘関節の軟骨が欠けた状態を「離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)」といい、欠けた軟骨片が関節に挟まると、急に肘の曲げ伸ばしができなくなります。

 

 

関節近くの軟骨と骨の境界にある骨端線がズレる「骨端線離開(こつたんせんりかい)」は成長期だけに起こる骨折の一種で、骨の成長が妨げられて痛みが生じ、関節の変形や運動障害をきたすこともあります。

 

軟骨のほかに、滑膜や骨片などが正常な位置を離れて関節内を動くこともあり、「関節鼠」とか「関節遊離体」とよばれます。

 

 

また軟骨がつぶれてしまう骨端炎(骨軟骨壊死)になると、だんだん肘の動きが悪くなったり、肘自体が変形してしまうこともあります。

 

そのほかのタイプの野球肘でも肘の屈伸運動、特に肘を完全に伸ばすことがつらくなるものです。

 

投球骨折は激痛が走り、短時間のうちに大きく腫れ上がるのですぐわかります。

 

 

野球肘の診断と治療

 

まず肘の動きと軟骨の状態を調べます。

 

軟骨は通常のレントゲン写真では写らないので、関節造影やMRI(磁気共鳴撮影法)、CT(コンピューター断層撮影)などの画像で判断します。

 

【早めに肘を休ませる】

痛み出したばかりで肘も正常に動き、画像診断でも軟骨の変形や欠損がみられない時期なら、肘を安静にするだけで十分回復の見込みがあります。

 

しばらく野球を休んで肘を使わないように気をつければ、1~3か月で自然に痛みが消えます。

 

【消炎鎮痛剤の湿布を】

やや炎症がひどく、痛みや腫れが強い場合は、消炎鎮痛剤の湿布や軟膏を使います。

 

ただし、こうした軽度の野球肘でも、完全に骨の成長の止まる成人期まで定期的に経過を観察する必要があります。

 

特に将来野球を続けていくつもりなら、無理をせず大事にしましょう。

 

【軟骨の変形や損傷なら手術法も】

軟骨が変形していたり、欠けていれば、手術が必要となることもあります。

 

飛び出た軟骨を削って形成したり、関節の中にはがれた骨片が入り込んでいるときは摘出します。

 

投球骨折ではらせん状に折れているため、そのまま固定するわけにはいきません。手術で骨を正しい位置にもどしてから固定し、骨がつくのを待ちます。ただし、くっついたあとの骨は、また同じような投球骨折を起こしやすくなっています。十分なリハビリが必要です。

 

野球肘の予防法

 

成長期は軟骨が軟らかいため野球肘になりやすいうえ、一度軟骨を傷つけてしまうと完全に治すことが難しく、好きなスポーツをあきらめざるをえません。

 

指導者は正しいフォームに矯正したり、投球回数を抑えるなど、予防を心がけることが大切です。

 

 

野球肘は11歳から12歳にもっとも多くみられるので、この年代の、特にピッチャーとキャッチャーには基礎的な体力づくりや正しいフォームを指導し、過度な練習をさせないようにしたいものです。

 

もし投球中に子どもが痛みを訴えたら、無理をさせずに、しばらく練習を休ませましょう。

 

 

 

 

 

 

成長期には適正なスポーツを

 

テニス肘や野球肘は再発しやすいといわれます。その原因は一度苦しんだにもかかわらず、また無理をしてしまうことにもあるようです。

 

痛いのをがまんして投げたり、限度を超えて投球しないことが大切です。注意しながらスポーツを続ければよく、まったく運動をやめてしまう必要はありません。

 

テニスでも野球でも痛みを感じない程度に楽しみ、いろいろなスポーツでからだ全体の骨や筋肉を鍛えればよいのです。

 

 

成長期は骨や筋肉がつくられる大事な時期です。特定のスポーツを続けるなら、必ず知識と技術を備えた指導者につくようにしましょう。

 

テニス肘・野球肘の予防法

 

●日ごろから手首と肘のストレッチングを続け、筋肉を伸ばしておく。
●年齢や技術力、体力に応じた適切な用具を選ぶ。
●練習は適度な時間にとどめ、必ず週に何日かの休息をとる。
●正しい指導のもとで、肘に過度な負担のかからない練習を心がける。
●肘や腕に痛みを感じたら、すぐに練習をやめ、湿布や消炎剤で手当てする。痛みが止まってから練習を再開する。
●単純な繰り返し運動ばかりでなくさまざまな筋肉を使えるバリエーション豊かなトレーニングを行い、いろいろなスポーツを楽しむ。

 

 

 

テニス肘や野球肘をよぼうするために、スポーツの前後のストレッチングは効果がありますか?

もちろん効果があります。スポーツの前後にストレッチング(筋肉の引き伸ばし運動)をすると、使わずにだれきっていたり、使いすぎて硬くなった筋肉が伸びて血行がよくなるのです。

 

肘の障害の予防には、肘、二の腕、肩の筋肉を1か所ずつ数回から10回くらいゆっくり呼吸しながら、筋肉の痛みを感じない範囲内で引き伸ばすとよいでしょう。

 

テニス肘や野球肘が疑われるときは、どのような病院へ行けばよいのでしょうか?

一般的には整形外科医の診察を受けます。

 

「スポーツ外来」を開設している病院も増えてきました。専門医がスポーツによって起こった障害の診断、治療、カウンセリングなどに応じています。

 

定期的に健康チェックもしてもらえるので、スポーツを続けていくうえで上手に利用するとよいでしょう。

 

テニス肘の治療に使うステロイドホルモン剤には、副作用はありますか?

多量に長期間用いると副作用が出ることもあります。

 

副作用には、むくんで満月のような丸い顔(ムーンフェイス)になる、毛深くなる、ニキビが出るなどの軽いものから、感染症にかかりやすくなる、骨折しやすくなるなど重度のものまでいろいろあります。

 

ただし、テニス肘の治療では、専門医の管理下で適度な量を使用し、一定期間投与して効果が現れない場合は中止するので心配ないでしょう。

 

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